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執筆者の写真WCF TEAM

THE WAY of Life in England (JP)

更新日:2021年7月2日

連載企画「THE WAY」では、毎回海外で暮らす女性を紹介しています。


第2回となる今回お話を伺ったのは、イギリスのエセックス州に暮らす七瀬愛理さんです。エセックス州はロンドンから電車に乗って東に約35分のところに位置します。今年で在住7年目となり、イギリスの生活にも慣れたという愛理さんですが、最初の1年は日本に帰りたくて毎日泣いていたのだとか。イギリスで感じた孤独、就活の苦労、異国の地での出産、さらにはイギリスの子育て事情まで、たくさんお話を伺いました!





ドミトリーで見つけた人生のパートナー


イギリス在住7年目の愛理さん。小学生のときから習っていた英語は、飽き性な性格の愛理さんにとって、唯一続いた習い事です。その後、高校でも英語を専攻し勉強を続けました。


高校を卒業すると、外資系の製薬会社で働き始めます。英語で行われる会議や研修もあり、社員の多くは「英語は話せて当たり前」という環境だったそう。


「英語をつかって仕事をする同僚や先輩の姿に刺激を受け、『私も完璧に英語をマスターしたい!』と思い、留学することにしました」


2010年5月。愛理さんは、滞在先さえ決めずにニュージーランドへ旅立ちます。


「ニュージーランドは日本と季節が逆なので、着いたのは冬のはじめ頃。せっかくだからスノボをしようと思い、しばらくはスキー場近くのドミトリーに滞在していました」


このドミトリーは、女性5人と男性1人の6人部屋。この同じ部屋に宿泊していた男性こそ、愛理さんの将来の旦那さんです。この出会いから3年後、ふたりは結婚します。


スキー場近くのドミトリーで、人生のパートナーに出会ったのでした。




泣いて過ごした1年目。イギリスでの孤独な毎日


結婚を機にイギリスでの生活が始まります。イギリスに移住することを、愛理さんのご家族は快く承諾してくれたそう。愛理さん自身も海外生活に抵抗はありませんでした。


「私は身長が180cmあるのでいつも目立っていました。特に日本では背が高い女性は珍しいからか、指をさされることもあって。なんとなく自分は海外の方が過ごしやすいのかも、という感覚はありました」


しかし、いざ生活が始まると、待ち受けていたのは孤独な日々。シャイな性格ゆえになかなか友達ができず、移住してから最初の1年は「日本に帰りたい」と毎日泣いて過ごしていたそうです。


そんな状況が変わり始めたのは、暮らし始めて1年がたった頃。愛理さんは積極的にまわりの人たちとコミュニケーションをとり始めます。


「『今のままではダメだ!』と思いました。自分に興味をもってもらうには、自分から積極的に心を開かないといけないと気づいたんです」


待っているだけではいけないと思い、初対面の人にも自ら話しかけたそう。こうして少しずつ、自分自身の力で環境を変えていったのです。



イギリスでの生活

出した履歴書60通以上! 困難を極めたイギリスでの就活


2014年2月に渡英し、愛理さんは早速就職活動を始めました。イギリスでの職探しは、「CV」とよばれる履歴書を出すところから始まります。


「英語を話せるのは前提として、就きたい仕事に関係する学位や経験がないと希望の職を得るのは難しいです。カフェの求人でも資格をもっているのかと聞かれ、びっくりしたことを覚えています」


何通もCVを出すも面接にさえ呼ばれない日が続き、ときにはCV片手に求人中の会社を突撃訪問することもあったそう。ようやく仕事が決まったのは、就職活動を始めてから8か月が経った2014年10月のことでした。


「この8ヶ月の間に60通以上はCVを出しました。一から全部自分で調べて、大変だったけど良い経験になったと思います」


働き始めたのは、社員数約200名のアパレル企業です。翌年12月、愛理さんは女の子を出産。約1年間の出産休暇を経て、毎週日曜日の週1日勤務で仕事に復帰します。


「平日は旦那が働き、土曜日は家族で過ごし、日曜日は私が働くと決めて仕事に復帰しました。イギリスでは女性はみんな働いているし、出産後も仕事に復帰するのが一般的です。専業主婦という概念がないんだと思います」


その後、2018年の6月に転職するまで、週1日のパートタイムで働きました。


今はロンドンにある日系商社で、フルタイムで働いています。2度目の就職活動は1度目よりスムーズだったとはいえ、10通以上はCVを送ったのだそうです。


ひまわり畑


イギリス子育てのお金事情、出産費用は無料で保育園が月14万!?


愛理さんは初めての出産をイギリスで経験しています。イギリスは医療費が無料。出産費用も無料です。さらに、出産する場所や出産スタイルを自由に選ぶことができます


一方、入院環境はというと、部屋は基本的に大部屋で、出産直後から母子同伴。父親や親族でも面会時間が終わると帰宅しなければならないのだそう。


「破水してから出産までに2日以上かかったので本当に疲れました。にもかかわらず、その日から母子同伴。部屋は6人部屋だったのでずっと誰かの赤ちゃんが泣いていて、いっときも休めず辛かったです」


出産にあたり、イギリスでは最長52週(約1年)の出産休暇を取得することができます。その間、最初の6週間は従前の給与の90%が支払われ、以降減額調整されながら、39週までは法定出産給付を受け取ることができます。


しかし、いざ仕事に復帰するとなると、経済的負担は大きいのだとか。たとえば、日本の保育園にあたるナーサリーの費用は、1ヶ月あたり平均1,000ポンド(約14万円)超。イギリスには「保護者が学校の送迎をしなければいけない」「子どもだけで留守番させてはいけない」という法律があるため、フルタイムの家庭ではシッターを雇わなければいけない場面も少なくありません。


「イギリスの会社は基本的に通勤手当が出ないので、毎月のナーサリー代と交通費で給与がほとんどなくなっていました(涙)」


なかにはキャリアを失わないために、収支がマイナスになっても子どもを預けて働く人もいるのです。


一方、無料の博物館や美術館、公園はたくさんあり、自然や動物と触れ合う環境は日本より充実しているという良い部分もあります。どの地域にも『プレイグループ』という就学前の子どもたちを遊ばせる活動グループがあり、日本の家族と離れて暮らす愛理さんも子育てで孤独を感じたことはないそうです。


親子写真

2人で1人分の仕事をする「ジョブ・シェアリング」という働き方


イギリスには時短勤務や在宅勤務を取り入れている企業は多く、女性にとっても働きやすい環境が整っているそう。愛理さんが勤める会社では、2人で1人分の仕事をする「ジョブ・シェアリング」という制度が導入されています


ジョブ・シェアリングとは、複数人で1人の仕事を担当すること。例えば、愛理さんの職場では、事務スタッフが「月曜〜火曜担当」と「水曜〜金曜担当」に分かれ、2人が交代で出勤しているそう。


「ジョブシェアの導入を提案したのは、まさに今その制度で働いている彼女たち自身なんです。普段から上司とはプライベートなことも含めてたくさん話しているので、仕事においても、日本の職場より上司や同僚に意見を言いやすいと思います」


働きながら家族の時間も十分にとれるので、制度の満足度は高いようです。



アフタヌーンティー

イギリス流「完璧じゃなくてOK」マインドで、家族との時間も大切に


愛理さんはこれまで、「何か大きいことがしたい」「何かを成し遂げなくては」とずっと思っていたそう。しかし、出産を機に考えが変わったといいます。


「子どもは一人と決めたから、私にとって娘の成長全てが『一生に一度』なんです。だから、働きながら家族の時間ももっと大切にしたいという思いが大きくなりました」


家族との時間を大切にするにあたり、愛理さんはイギリス人の友達から大きなヒントを得ました。それは、「いつも完璧でいなければ」というプレッシャーを捨てることです。綺麗に着飾らなければいけない、手間暇かけて毎日ご飯を作らなければいけない……と考えず、できないときはポイッと諦めてしまうのだとか。


実際に、多くのイギリス人が夕食は冷凍食品に頼り、子どもにはピーナッツバタートースト(ジップロックに入れて出来上がり!)をランチに持たせているそう。忙しいときは、部屋の掃除もクリーナー(清掃サービス)にお任せです。


「今の悩みは、子育てのこと。娘に日本のマナーをどこまで教えるべきか、日本語の習得をどのようにサポートしていくかを日々考えています」


同じハーフの子どもをもつ先輩ママ曰く、子どもが「日本語を話したくない」と言い出す日がいつかくるのだとか。子どもは成長するにしたがって、いろいろなことを比較し始めます。まわりと同じであることを心地よく感じるため、他の子と違う言語を話して目立つことを嫌がるのです。


「私も目立って嫌だという気持ちはよく分かるから、しっかり考えていきたいです」



イギリス人は、本当によく紅茶を飲むのだそう。嬉しいときやリラックスしたいときはもちろん、辛いときや悩んでいるときも、兎にも角にも飲むのです。


「子どもが成人して手が離れたら、ケーキと紅茶を囲んで近所の人と集会したい」と、将来の夢を話す愛理さん。「大きいことは達成しなくても良いかな」と言いながらも、今はスペイン語の勉強を始めたそう。大切なものが増え、優先順位は変わっても、変わらず努力を続ける愛理さんのしなやかな芯の強さが見えました。





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Women can fly.


Much love, xxx

Team WCF


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