WOMENCANFLY.COの連載「THE WAY」では、毎月海外で暮らす素敵な女性をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、ジャマイカ在住2年目の進藤亜貴子さんです。旦那さんの駐在に伴い、家族4人でジャマイカのキングストンに移り住みました。ジャマイカに住む日本人は、わずか200人ほど。レゲエや五輪金メダリストのウサイン・ボルト選手の出身国として有名ですが、まだまだ知らないことがたくさんあります。
亜貴子さんには、そんなジャマイカでの暮らしや現地校に通う2人のお子さんの海外子育て、海外生活による価値観や考えの変化について、ありのままに話していただきました。
ジャマイカの歴史や文化を学ぶ中で理解を深め、家族の支えと前向きな姿勢で新たな挑戦に立ち向かう亜貴子さんの姿勢をぜひお楽しみください。
ジャマイカは「陽気なレゲエの国」ではない!?
亜貴子さんは大学卒業後、地元の金融機関や商社で働き、旦那さんと結婚。出産を機に、専業主婦になりました。学生時代にカナダに1ヶ月のホームステイをした経験もあり、もともと海外に興味はあったのだそう。そのため、結婚11年目に旦那さんがジャマイカ駐在になった時も、「楽しそう!」とポジティブに受け止めていたといいます。
「ジャマイカといえば、レゲエが有名ですよね。学生時代にダンスをしていたので、レゲエは身近にありました。ダンスの友人たちにジャマイカで暮らすことになったと言うと、『羨ましい』と言われて。ジャマイカ人の友達をいっぱいつくるぞ!と楽しみにしていたんです」
亜貴子さんがジャマイカ生活を楽しみにしていたのには、もう1つの理由が。ジャマイカへ行く前、2016年から2019年にかけて、旦那さんの駐在に帯同してクロアチアで暮らした経験があったのです。クロアチアの人は優しく、街並みはどこを切り取っても美しい。そこで過ごした3年は、楽しくて学びの多い時間でした。そのため、ジャマイカでもそんな楽しい日々が待っていることを疑わなかったのです。
しかし、その予想はすぐに覆されます。
実は、思うように外出することができません。ジャマイカは、殺人や強盗、薬物関連の事件などが多く、治安が良くない国だったのです。万が一、亜貴子さんやお子さんが事件に巻き込まれると、旦那さんの仕事にも大きな影響を与えてしまいます。そのため、移動は車だけ、自由に動いて良いのは家の敷地内だけなど、安全を考慮したいくつもの厳しいルールを守る必要がありました。
陽気な国というイメージと現実とのギャップ
物価が高いのも想定外だったといいます。亜貴子さんが暮らすのは、ジャマイカの中でも外国人が多いエリア。ここでは、レストランのカツ丼が1杯4,900円することもあります。白菜は、1玉1,600円。これでも安い方なのだそう。そのため、外食しても自炊しても、食費が驚くほど高くついてしまいます。
さらに、息抜きにカフェへ立ち寄った時には、コーヒー1杯が出てくるのに1時間以上待ったこともあるのだそう。ジャマイカ人の時間感覚は、私たち日本人にとってスローに感じることもしばしば...。いつしか大好きなカフェ巡りからも足が遠のき、楽しみやお気に入りの場所を見つけるのもそう簡単ではありません。現地に友人ができたら少しは行動範囲が広がりそうですが、それも難しいのだそう。
また、国民性についても意外なギャップがありました。ジャマイカ人はよく口論すること。特に女性は怒りっぽく、自分から謝らないのだそう。
「ジャマイカ人は明るくフレンドリーな人たちだと思っていましたが、現地の友達づくりは難航しています。レジに並んでいると、アジア人だからか、はっきりと態度を変えられることもあって。あまり笑顔も見せてくれません。陽気な国というイメージと現実とのギャップを感じています」
私たち日本人は、初対面であってもニコッと微笑みかけることがありますが、彼女たちはむやみに笑顔を見せません。それには、こんな背景があるのだそう。
「友人が教えてくれたのですが、ジャマイカの男性のなかには、子どもができても結婚せずにどこかへ行ってしまう人が多いそうです。そうなると、女性は子育てしながら働かないといけないので、強くなければいけないそうです。そして、ニコニコ笑うのは、弱さの表れだとされていると聞き、驚きました」
なかなか心を広いてもらえない分、笑って手を振ってくれると、とても嬉しくなるもの。フレンドリーな交流が難しく多くないからこそ、親切なジャマイカ人に出会い笑いかけてもらうと、それだけで心が明るくなるそうです。
歴史や文化を学ぶと、その国がもっと見えてくる
外出する機会は多くありませんが、亜貴子さんは暮らしの中で、カルチャーショックを受ける場面が多々あります。お子さんの学校でも、さまざまな驚きがあります。
2人の子どもが通うのは、比較的裕福な家庭の生徒が集まる現地校です。治安が良い学校なのですが、日本の学校とは違う光景が繰り広げられています。
例えば、ゴミをゴミ箱に捨てないので、教室中にゴミが散乱しています。生徒たちは先生の話を聞かないのが当たり前。そのため、お子さん二人は特別なことは何もしていないのに、「彼女を見習いなさい」と模範生徒のような扱いを受け、先生から褒められるのだそう。
またクラスでは、白いキャンディを粉状に砕き「ドラッグ」といって売る遊びが流行ったこともあり、ドラッグが身近であることを実感します。
「暮らしていると、いろんなことを疑問に感じます。ドラッグや差別も、なんであるんだろう?と。娘たちが学校でジャマイカの歴史を学んでいて、その内容を教えてもらった時に、『こういう歴史があるからなのか』と納得することがありました。ジャマイカの歴史やバックグラウンドを紐解くと、ジャマイカ人の行動や感情などを理解できる部分もあるんです。なので、暮らす国の歴史や背景を学ぶことを大切にしています」
ジャマイカは、かつてイギリスの植民地であり、奴隷貿易の拠点でした。すでに奴隷制度は廃止されていますが、今なお肌の色による差別は残っているといいます。
奴隷制度や人種差別、貧富の差や学校教育のあり方について、実感を伴って考える機会を得られたのは、ジャマイカに住んでいるからこそ。私たちは、学校教育やメディアによって、他の国に対して「きっとこうだろう」という固定概念をもってしまいがちですが、経験しなければ本当のことはわかりません。メディアを通してではなく、実際に経験してみて判断することが大切です。
日本と比べると、危険な目にあう可能性が高いジャマイカ生活。観光やショッピングを思い切り楽しむのは難しいですが、そういう状況だからこそ、その国の海外生活を通して見えてくる国の歴史や文化、考えなど得られるものは確かにあるのです。
公用語の英語が、全く聞き取れない!
ジャマイカの公用語は英語です。しかし、ジャマイカのアクセントがあまりに強いので、聞き取るのはとても難しいのだそう。
「例えば、busは『ボス』、askは『アクス』、kettleは『ケクル』、bottleは『ボクル』、nameは『ネーマ』というように、私たちが習った英語と発音が全然違うんです。ただでさえ英語は勉強中なのにそのうえアクセントが強いので、単語を聞き取ることさえできず、すっかり自信を失っています」
こういった経験から、英語と一口に言っても、世界にはさまざまなアクセントの英語があることを実感しました。しかし、一度は諦めかけたジャマイカ英語ですが、現地の人とコミュニケーションをとるにはやっぱり必要。諦めずに、英語学習を続けています。
亜貴子さんの語学学習は、YouTubeや本が教材です。いろんな教材に手を出すのではなく、コレと決めたものを繰り返し練習するのがコツ。オススメは、Bilingirl ChikaさんのYouTubeチャンネル「バイリンガール英会話」。最近、Bilingirl Chikaさんが運営するオンラインサロンにも入会しました。
一方、ローカルの学校に通う2人のお子さんたちは、最初の方こそジャマイカ英語を理解できずに泣く日もあったものの、今ではすっかりマスターしています。とはいえ、全てを完璧に理解できるわけではなく、ときには英語が理解できていないことによって、とんでもないハプニングが起こることも。
以前、陸上部に所属する小学生の息子さんが、「明日はジャマイカ大学で練習がある」と言うので練習を見に行ったところ、なんとその日は練習ではなく大会だったことがありました。俊足のジャマイカ人に囲まれた息子さんは、練習着のままレースに出場。亜貴子さんの周りには、日本人を珍しがってか、ジャマイカ人の子どもたちが「彼の名前は何?」と集まってきました。息子さんが走る時には、名前を呼ぶコールが応援席から沸き起こったそうです。
「英語ができないとどんどん行動範囲が狭くなってしまいます。現地の人と仲良くなりたかったら、こちらからの歩み寄りが絶対に必要ですよね。今は、勇気を振り絞って話しかけたり、子どもたちの学校行事に参加するようにしています」
ジャマイカで再認識した、日本の良さと家族の大切さ
亜貴子さんには、ジャマイカ生活で心がけていることがいくつかあります。
1つ目は、自分たちの行動が、日本人の一般的な行動として現地の人に見られているという意識をもつこと。これはお子さんたちにも繰り返し伝えていることです。
「日本に住んでいた頃は、人の目を気にすることが多くて窮屈に感じることもありました。もっと自由で良いんじゃない?って。でも、人の目を気にすることによって、治安や清潔さや秩序が保たれているという側面もあると思うんです。ジャマイカに住んでいると、改めて日本ってすごいんだなと感じます」
2つ目は、病気にならないこと。とにかく心身の健康が一番です。もちろんストレスを感じることもありますが、そういう時はいつも旦那さんに励まされています。
「以前、夫に『私が悩んでることってくだらない?』と聞いたことがあるのですが、『うん、くだらない』と即答されたことがあります。驚いたんですが、その時一気に肩の荷がおりたんですよね。私がクヨクヨしていると、いつも『どうしたんですか』と声をかけてくれて、その一言で元気が出ます。ああ、この人が側にいてくれれば良いやって思うんです」
旦那さんは、結婚当初から家事も育児も積極的にやるタイプ。出会った頃からおおらかで、そこは今も変わりません。海外という新しい環境のなかで、変わらない存在というのはありがたいものです。
これから先も、旦那さんはさまざまな国に駐在する予定なのだとか。国も期間も、自分の意思とは関係なく決められてしまう駐在生活ですが、どのような国であっても、その国のことを知ろうと歩み寄る気持ちと、変わらない温かさをもつ家族の存在があれば、その地で踏ん張ることができるでしょう。
日本では小さなステップでよくても、海外での挑戦には、大きなジャンプが必要です。
きっと、今の踏ん張りは、将来大きくジャンプするための助走になるはず。日本人がわずか200人しかいない国で家族の健康を守り、何かやってみようとチャレンジしているだけでも、私たちに勇気を与えていることを忘れずに、亜貴子さんが思い描く空に、自分らしく羽ばたいてほしいと思います。
今後の亜貴子さんの海外生活がどの国であっても、健やかに素敵なものでありますように。
様々な国で海外駐在する亜貴子さんのように、その国のことを知ろうと歩み寄る気持ちと家族が元気でいることが海外で活き活きと過ごす一番のヒントかもしれません。
これから海外で生活される方の参考になれば嬉しいです。
今回もお読みいただきありがとうございました。
亜貴子さんの次なるチャレンジもますます楽しみです。
Thank you for reading this, and we are always here for you!
Women can fly.
Much love, xxx
Team WCF
※WCFメールマガジンではいち早くWCFの記事をご覧いただけます。
メールマガジンのご登録をcontact (下部)お願いいたします。
Opmerkingen