THE WAY 帰国者編では、海外での経験を活かし、帰国後も輝き続ける女性たちをご紹介します。
今回ご紹介するのは、ヨガ講師・ヨガセラピストの戸島絢香(としま・あやか)さんです。体調不良をきっかけに、当時働いていたアパレル会社を退社。28歳でオーストラリアへ留学することになりました。現在は日本に帰国しシドニーのヨガ学校で学んだことを生かして、体と心の繋がりにフォーカスしたヨガセラピーなどをオンラインで行っています。
心身のバランスを崩したときに、絢香さんを救ってくれたヨガ。この記事では、そのヨガを仕事にするまでに絢香さんが経験した、シドニーでの多忙なヨガ学校生活や多様なバッググラウンドをもつクラスメイト、授業についていく英語力を身につけるための工夫、絢香さんから見たウェルネス大国・オーストラリアの人々の暮らしについてご紹介します。
人生のどん底からオーストラリア留学へ!
絢香さんは高校を卒業後、アパレル企業に就職し、販売や広報の仕事をしていました。「これくらいでいいや」と手を抜くことができない性格のため、ついつい頑張りすぎてしまうことが続き、遂には心身に不調をきたしてしまいます。
「26歳のときにパニック障害と診断されました。大好きな仕事を辞めなければならず、友人ともあまり会えなくなり、当時は本当に人生のどん底でした」
東京に住み、アパレル企業で働き続け、結婚して子どもをもつ──。こんな未来を描いていましたが、病気によって人生のルート変更を余儀なくされます。
「退職して初めて、『これからどうやって生きていこうか』と考える時間ができました。そしたら自然と、もう満員電車には乗りたくないと思ったんです」
絢香さんは神奈川県茅ヶ崎 (ちがさき) 市に移住し、場所を問わない働き方を模索し始めます。早速Webライティングの仕事を始め、ブログを立ち上げました。サーフィンやボディボードを始めて、波乗りに夢中になったのも同じ頃です。
いざ仕事や東京での暮らしを手放してみると、今度はふと「海外で暮らしてみるのも良いかもしれない」と思うように。ワーキングホリデーという制度の存在も、この頃初めて知りました。
もう失うものはない。それならば、大好きなサーフィンができる国に行こう。
こうして、良い波があることで有名なオーストラリア最東端の町・バイロンベイへワーホリ留学することに決めました。絢香さんが、28歳の時です。
留学生が少ないバイロンベイでヨガやサーフィンを楽しみました
シドニーのヨガ学校で味わった、涙と汗と最高の達成感
絢香さんはバイロンベイで4ヶ月を過ごした後、ケアンズに移り、ファームステイを行いました。ワーホリ2年目はシドニーで過ごします。留学当初はできるだけ現地の暮らしに溶け込むように生活したいと意気込んでいましたが、気づけば日本人の友達と過ごす方が多くなっていきました。
こうして2年間のワーホリ生活が終わったとき、絢香さんの中にはひとつの心残りが生まれます。「2年間留学してきました」と胸を張って言える語学力が伴っていなかったのです。そこで、当時の絢香さんにとって唯一の選択肢であった「学生ビザ」に切り替えて、滞在を延長することにしました。
学生ビザを取得するためには、当然学校に通う必要があります。学校は、語学学校やビジネススクール、看護学校やビューティーセラピストなど、種類もさまざまです。オーストラリアの学生ビザがユニークなのは、規定の出席率を満たしていれば就労ができること。そのため、多くの学生が休日や長期休暇にはアルバイトやインターンシップなどを行います。
絢香さんは、数ある学校の中からどこに通おうかと思ったとき、ヨガの専門学校があることを知りました。
「もともとヨガは長く続けていた趣味の一つ。いつか講師資格を取得したいとは思っていたのですが、まさか海外で学ぶとは思っていませんでした。でも、せっかく学校に通わないといけないんだったら興味のあることを学びたいと思っていて、思い切ってオーストラリアでヨガを学ぶことにしたんです」
絢香さんが選んだのは授業も課題も厳しいと有名なヨガ講師を育成する学校で、クラスメイトは18人。講師も生徒も、世界各国から集まっていました。授業は週に2日あり、1ターム=3ヶ月。8タームでコース修了です。
授業は朝8時半から16時半までみっちりあり、午前中はポーズを丁寧に確認しながら実際に身体を動かす実技。午後はヨガの知識はもちろん、医学・健康の知識なども学びました。
ヨガというと、日本ではダイエットや運動というイメージが強いですが、オーストラリアでは心の健康にもよりフォーカスされています。そのため、癌や依存症、鬱などについての授業もあり、セラピーとしてのアプローチを学ぶ機会がありました。
絢香さんは2年間で8タームのうちの7タームを修了して、一度帰国。その後、最後の1タームを取得するために再びシドニーへ戻り、2022年6月にヨガセラピストのプログラムを無事修了しました。
「私は高校を卒業してすぐに働き始めたので、大学受験や卒業論文を経験していません。なので、勉強での達成感をあまり味わってこなかったんです。でも、大量の課題に泣きながら取り組んだり、クラスメイトとポーズを練習したり、途中休学しながらも無事にヨガ学校を卒業できたことは、何にも代え難い大きな達成感と自信に繋がりました」
自分自身に「頑張ってくれてありがとう」と言いたくなるほどの達成感を味わうことは、簡単なことではありません。海外で挑戦する醍醐味の一つは、まさにその気持ちを味わえることなのではないでしょうか。
言葉にできないほどの達成感!やりきりました!
英語もビジネスも、好きなことを続けることが大切
絢香さんは、約5年間をオーストラリアで過ごしました。英語力を軸に留学生活を振り返ると、成長した時期は大きく3段階に分けられます。
1段階目は、留学直前の半年間。この期間、絢香さんは留学準備のために語学学校へ通い、ほとんど喋れないレベルから日常会話ができるレベルまで引き上げました。
次に、ヨガ学校に入学する直前の3ヶ月間。現地のヨガ学校に入学するために必要な基準を満たすため、シドニーの語学学校に通いました。人生で1番勉強した期間です。この期間があったからこそ、ヨガ学校での英語の授業についていくことができました。
最後は、ヨガの学校に通った約2年。授業や課題を通して、浴びるように英語に触れました。英語に必要な「Reading」「Writing」「Speaking」「Listening」の4つのスキルを必然的に繰り返すことで、自然と、しかし着実に英語が身についたのです。
「英語での授業は確かに大変でしたが、ヨガ自体が自分の興味があることだし、好きなことだったので全く苦ではなかったんです。英語の上達に有効だったのは、英語を学ぶことではなくて、英語を使って好きなことを学ぶことだったと思います。そして、繰り返し、続けること。続けることが大事です」
絢香さんは、「続ける」コツを「やめないこと」だと言います。
例えば、絢香さんは長い間ブログを続けています。よく「どうしてそんなに続けられるんですか」と聞かれますが、実は3ヶ月間更新していなかった時期もあったのです。でも、そこでやめませんでした。つまり、再開したら、それは続いていると言えるのです。
「ヨガと同じで、ブログも好きだから続けていることのひとつです。もちろんたくさんの方に読まれてさらに収益が出ると嬉しいですが、そうでなくても私は書き続けると思います。実際私のブログは大きくバズることはあまりないのですが、それでもコツコツと続けてきました。自分を発信することが好きですし、書くと思考の整理ができるんです」
ヨガを学び、英語を学び、ブログを書き続ける──。地道な努力は、すぐに役には立たなくても、1年後、5年後、10年後に必ず大きな力になることを、このときの絢香さんは、まだ想像していませんでした。
大好きなヨガを学ぶことで、自然と英語も上達。
オンラインサロンを開設。初月で45人の集客に成功。
ヨガ学校生活で大変だったことのひとつが、学費を稼ぐことです。ただでさえ授業と課題に追われる日々。そこに追い打ちをかけるように、3ヶ月のターム毎に学費の支払い時期がやってきます。
最初の1年間、絢香さんは飲食店でアルバイトをしていましたが、学校生活も2年目に突入した頃、ヨガのレッスンを始めることにします。まずは近所に住む知人に公園やビーチでヨガレッスンをはじめ、その後オンラインサロンを開設。サロンメンバーに向けてオンラインでもレッスンを行いました。
オンラインサロンの開設というとハードルが高いように感じますが、ブログを長く続けてきた絢香さんにとって、オンライン上のコミュニケーションは身近なもの。なかなかブログで芽が出ないと言いながらも、コツコツ続けてきたことで、着実にファンは増えていたのです。
ブログで「オンラインサロンを始めます!」と発信すると、すぐに45人のメンバーが集まりました。
「ブログは主に一方的な発信なので、読んでくれている人はいるのかなとか、誰が読んでくれているんだろうと思っていました。でも、サロンを始めると言ったら入会したいと手を挙げてくれる人がたくさんいて、本当に嬉しかったです」
ブログ収入に加えてオンラインサロンでも収入を得ることができ、絢香さんは飲食店でのアルバイトをやめました。そして、ヨガ学校で学んだことをオンラインサロンで活かし、オンラインサロンで得た収入でヨガを学ぶというサイクルができ、よりヨガに集中できる環境ができたのです。
地道に続けてきたブログと、思いがけずオーストラリアで学ぶことになったヨガ。2つの点と点が線になり、絢香さんのオンラインサロン開設は華々しいスタートをきりました。
オンラインサロン開設当初から参加してくださっている生徒さんも。
オーストラリアはウェルネス先進国!
絢香さんは帰国後、千葉で暮らしています。同じくサーフィンが趣味の旦那さんと、夫婦で波乗りを楽しんでいるそう。オーストラリアで始めたヨガクラスは全てオンラインで行っていたため、住まいを日本に移してからも、スタイルを変えずに続けることができています。
絢香さんのクラスは、オンラインサロンメンバー向けのグループレッスンと、マンツーマンクラスの2種類です。グループレッスンは、チケット制だとなかなか続かないという自身の反省を活かし、ヨガが日常に溶け込んでほしいという思いから月額制にしました。
マンツーマンクラスでは、ヨガセラピーやその方に合わせた姿勢改善・ボディメイクなどを行っています。初回のセッションでヒアリングを行い、体や心の声に耳を傾けます。ヨガを通して心身を整えていくことが目的です。シドニーの学校で学んだ知識や経験が活かされています。
「シドニーのヨガクラスに参加したとき、男女関係なく、みんな三点倒立をしていてすごく驚いたんです。オーストラリアの人は健康への意識が高く、ヨガや運動が生活の一部になっていると実感しました。日本でももっと健康への意識が高まったら良いなと思います」
絢香さんは、オーストラリアの良さについて、気候の良さや自然の豊かさ、そしてさまざまなバックグラウンドをもつ人々の多様性を挙げました。
例えば、シドニーの語学学校には、モンゴル人女性のクラスメイトがたくさんいました。彼女たちは、より良い仕事を得るために夫と子どもたちをモンゴルに残し、単身で留学に来ていたそうです。
「私の中の常識では、家族を残して留学するという発想はなかったので驚きました。実際に私が同じことをするかというと、しないかもしれない。でも、世界には自分の意思を貫いて行動に移している人がいるという、その存在自体が、日本に帰ってからも私を励ましてくれるんです」
紆余曲折ありましたが、間違いなく言えるのは、オーストラリアで人生が変わったということ。その変化は、知らず知らずのうちに起きたことではなく、絢香さん自身の努力で掴んだものです。
一度人生のどん底を味わい、シドニーでヨガを学んだ絢香さん。「過去があって、今がある」と言えるのは、充実した今があるからです。自身の過去を、現在への布石として輝かせた絢香さんの努力に胸を打たれます。
共に学んだクラスメイトたちは、かけがえのない存在です
絢香さんの、次なるチャレンジもますます楽しみです。
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